実際に彼はその使命を十分に果たしながら、一統四十六名の遺族の許を歴訪し、討ち入りの子細を告げると共に、後々の暮らし向きの援助をして廻った。
更には、遠島になっている、あるいはなろうとしている(十五歳になると遠島)遺児を助けるため、内蔵助の又従兄弟であり関白近衛家の諸大夫の進藤源四郎と図り、あえて自首して結果的に大赦を勝ち取り、遺児を助けてさえいる。

討ち入り十六年後のある日、吉衛門は討ち入りの一統に加盟していながら前日に逐電した孫左衛門を見かける。親友であった孫左衛門の逐電が信じられなかった吉衛門は、裏切られた思い出の孫左衛門を場合によっては切るつもりで探し回る。
しかし、孫左衛門もまた内蔵助の密命を受け、内蔵助の隠し子可音の養育を托されていたのであった。その甲斐あって立派に成人した可音は、京の豪商茶屋四郎の長男修一郎と芝居小屋で運命的出会いをした後、やがて結ばれることになる。京を探し回った吉衛門は、やがて洛西の大枝中山に隠れ住む孫左衛門を探し出し、その隠された使命を知ることになる。

晴れの婚礼の一行が洛西から京市中に入るにつれ、三々五々に旧赤穂藩士が祝いに駆けつけ、心寂しかった一行は一変して華やかな嫁入り一行となり、婚礼の場に到着する。


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(2011年3月 6日)

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「最後の忠臣蔵」(角川文庫、池宮 彰一郎