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2023年11月12日 (日)

・栽培技術の革新(2)栽培技術もこれだけ変わってきました

 

先に京都園芸倶楽部の創立百周年のプレ講演につき、私が担当した「栽培技術の革新と新野菜

の登場」の内容の内から、百円ショップで大抵の園芸資材が、簡単に手に入ることを紹介しま

した。ただ草花や野菜のタネは百円ショップでも売っていますが、あまりお薦めはできませ

ん。というのは安いタネは古い品種であったり、発芽率が悪いからです。タネはそれほど高

ものではなく、一流メーカーのタネを購入した方が、発芽率・品質が保証されています。

またタネ購入時には少量を買わないでまとめて買い、残れば密封した容器に、シリカゲルな

の乾燥材を入れて冷暗所に保存すれば5年くらいは保存できます。今回は百円ショップでの栽

資材に続き、最近では栽培技術が以前とは変わって簡単で便利に変わってきている幾つかの

について紹介します。

  • 1_20231112141101

マルチの効用

畝にマルチを張ることにより、雑草の発生を抑え、畝面からの水分蒸発を防いで水分を保ち、

畝面から水の跳ね返りを防いで病気の感染を防げることを先に紹介しました。更にそのマル

にシルバーマルチやムシコンマルチを使うと、虫の飛来を防ぐことが出来ます。またマルチ

に穴をけ、そこに普通ではタネを3,4粒まきます。多くの野菜では発芽後本葉が展開して

た後、旺盛な苗1株を残して他を間引き、1株だけ育てる「一人育ち」にします。しかし低

温期や種によっては、3~4株をそのまま残して育てる「共育ち」をさせます。種類によっ

てはそのまま共育ちで育てたり、あるいは旺盛に育ってから1株にします。

  • 21

共育ち1

オクラの場合は「一人育ち」にすると株は旺盛に育ちますが、実をつけた後は遅れないように

早めに収穫しないと硬くなってしまいます。しかし「共育ち」で4本立ちにしておくと、お互

いが競合をして茎はやや細めになり、実への余分もゆっくり運ばれます。実の成熟もゆっくり

となり長期間柔らかいため、収穫時期の幅が広がります。

 

  • 22

図2-1友育ち2

ニンジンの場合は初期生育が緩慢で茎葉が軟弱なため、1回目の間引きは遅いほうが良いの

は、共育ちの状態で互いに競争させ、初期生育をよくするためです。

 

  • 22_20231112143801

図2-1共育ち3

ダイコンはゴボウと同様に、間引きを急がないで共育ちをした方が、株元への日射を遮り、よ

く展開して受光態勢の良い個体を選べるという良い効果を生みます。

 

  • 34

サトイモのタネ球の逆さ植え

タネ球の芽を上にして植える従来の植え方では、親イモの上に子イモができ、その上に孫イモ

が地表近くにできるため、土寄せが必要でした。しかし、芽を下にしてタネ球を植える逆さ植

えでは深植えした状態になり、親イモが普通植えの場合より下にできます。すると、子イモや

孫イモは地表よりかなり下にできるため、土寄せの必要がなくなります。さらに親イモが深く

にできるため、子イモや孫イモが育つ空間も広くなり、大きくて揃いのよいイモに育つように

なります。

 

  • 45

スイートコーンの栽培管理

最近はスイートコーンの栽培菅理が少し変わってきて、除房をしなくなりました。一番上につ

く雌花(雌穂)からヒゲ(絹糸)が出るころ、それよりも下にできた雌花(雌穂)を取り除く

除房をしていました。

しかし、除房しても上の穂の肥大にほとんど影響はなく、かえって茎葉を傷つけ生育を遅らせ

る危険性があるため、除房をせず残します。

 次いで無除けつ栽培といって、分けつ(わき芽)を除去しない栽培方法に変わりました。株

元から出る数本のわき芽を取ると養分の分散が防げて、穂が大きくなると思いがちですが、株

元にわき芽を残すことにより、根数が多くなり倒伏しにくくなります。また、わき芽につく葉

も残るため株全体の葉数が増えて、同化養分が多くなり、穂の肥大が促進されます。更にわき

芽の先端につく雄花も増えるため、花粉の飛散期間が延び、穂の先端まで実がつくようになり

ます。

 

  • 1_20231112144001

キュウリの正常発芽

キュウリなどのウリ類では、胚軸の基部にペグ(ツメ)が発達します。正常発芽の場合、ペグ

に種皮が引っ掛かり、子葉は種皮から抜けます。

 

  • 3_20231112144101

キュウリ発芽時の皮被り

キュウリなどのウリ類やオクラを春先に育苗中、子葉に種皮が被った皮被りになることがあり

ます。その多くは発芽を急いで高温管理をするためで、ペグが未発達で皮被りとなります。手

で種皮を取ろうとすると子葉を痛めてしまい、子葉の展開も劣り光合成も不十分で、その後の

生育も進みません。

 

  • 43

キュウリタネの宇宙での発芽の様相

東北大学の高橋・菅は向井宇宙飛行士に依頼し、キュウリ種子を宇宙空間で発芽させて育て、

発芽を観察しました。興味深い事に宇宙空間の微小重力下では重力屈性は起こらず、またペグ

が2個できますが上方向に伸びるため、皮かぶりになっています。地上では重力に反応して子

葉は下向きにフック状となり、その下側のペグだけが発達して種皮を引っかけて、皮被りを防

いでいるようです。

  

関連の記事が 園芸植物・園芸情報 にもありますので、ご覧ください。

 

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