・栽培技術の革新(3)栽培技術もこれだけ変わってきました
先に京都園芸倶楽部の創立百周年のプレ講演につき、私が担当した「栽培技術の革新と新野菜
の登場」の内容の内から、(1)として百円ショップで大抵の園芸資材が、簡単に手に入るこ
とを紹介しました。また最近では栽培技術が以前とは変わって簡単で便利に変わってきている
点について、(2)でタネまき後の共育ちの利点、サトイモの逆さ植え、スイートコーンの無
除房、無除けつ栽培、キュウリの皮被り防止メカニズムなどを紹介しました。
今回は、トンネル被覆によるエンドウの寒害回避とダイコンの抽苔防止、ミニトマトとイチゴ
栽培のポイントなどについて紹介します。
エンドウの寒害防止
エンドウは一般に秋にタネをまき、冬を越した翌春に収穫します。しかしタネを早まきしたり
異常気象で暖冬になると、生育が進んでしまいます。しかしエンドウは本葉2~3枚くらいの
小さな苗の時が耐寒性は最も強いのです。しかし異常気象などで生育が進んでしまったりタネ
を早まきしてしまうと、寒害で枯れないようにトンネル被覆などで寒害を防止してやる必要が
あります。簡単には敷きわらか黒マルチを張
り、不織布でべた掛けをして保温します。更に塩化ビニールなどでトンネル被覆をしてやれ
ば、地上部の順調な生育が図れると共に、根も低温から守ってくれることでしょう。
ダイコンの抽苔防止
春先のダイコンは抽苔しやすく、ダイコンの収穫はなかなか困難になります。それはダイコン
のタネをまいてもまだ気温が低いのに、発芽しかけたダイコンはすぐに低温を感応して花芽が
できかけてきます。ハクサイやカブも同様で、種子春化の低温要求性があります。一方キャベ
ツやタマネギ、ニンジンは、ある程度大きく生長しないと低温に感応しない植物体春化の低温
要求性があります。ダイコンの低温反応では昼間をトンネル被覆をして高温に管理してやれ
ば、夜間の低温の効果をある程度打ち消すことが出来ます。
そのため、タネまき時から本葉5~6枚頃までトンネルをかけ、昼間の4~6時間を20℃以上に
保って生育を促進してやりトウ立ちをある程度防げます。トンネルは昼温が高くなる頃まで続
ければ防止効果は更に高まります。
イチゴの栽培
イチゴは7月にランナーを苗床に植えて育苗し、10月頃定植します。秋の低温短日条件で花芽
が分化して花芽数が増加してきますが、葉柄は伸びないで短縮しています。一方根はおう盛に
伸びて広がっています。
イチゴのこような現象を40年くらい前迄は矮化現象と言っていました。今ではイチゴのこの現
象を休眠と言っています。イチゴは2月頃までは内生休眠と言ってトンネルをかけ暖房しても
休眠は破れませんが、休眠が破れた3月中頃には暖かくしてやると葉柄は伸びて開花結実も進
んできます。
しかしトンネルをかけたり暖房をしなければ、5月頃に果実を収穫するのが本来の旬の時期で
した。今では12~1月に低温処理をして休眠を破り、2月頃から暖房をして肥大してきた果実
を収穫する栽培が主流になってきています。
イチゴのランナー
開花結実が終わる頃になると、株元から花芽の代わりにランナーが伸びだして、その先に次々
と子苗をつけます。子苗迄のランナーからも、わき芽が更に1本伸びてきます。初めにできた
子苗は大きくなりすぎたりするので、2番目以降の子苗が収穫され、7月頃苗床に植えて育苗し
ます。秋に定植する際には、ランナーのつるの着いていた方を畝の内側に向けて植えます。す
るとランナーの向きとは反対側に畝の通路側に花房が着くため、日当たりがよくて着色は促進
され、また収穫もしやすくなります。
トマトの定植は第1花房開花期
トマトはなぜ第1花房開花期に定植するのでしょうか。それはトマトが高温性野菜であるた
め、温床育苗をして第1花房が開花期で、地温が15℃以上になってから定植をしています。実
はこの時第1花房が開花しながら、その中の第1花から順々に果実になり肥大してきているだけ
ではないのです。それより先の茎頂には第2花房から第3花房、第4花房迄分化していて、それ
ぞれの花房の中でまだ花芽はどんどん増えています。
定植して活着がうまくいき気温が暖かくなっていれば、茎葉の生長とこれら第2~4花房が順調
に発育しながら、第1花房の果実も肥大できるのです。暖かくなって第1花房開花時に定植する
のが、第1花房の肥大と第2~4花房の発育を順調に進ませる管理方法なのです。
ミニトマトの仕立て方
大玉トマトでは左端の図のように1本仕立てにして、花房と花房の間にある3枚の葉の横から出
るわき芽を全て除いています。実はトマトは茎の先端に花芽ができています。花芽ができると
更に花芽の数が増えてきますが、上の写真のようにその時にすぐ下のわき芽が伸びてきます。
このわき芽は3枚の葉を分化する頃、花芽ができてきて、また直下のわき芽が伸びてきます。
見かけ上1本の主茎がある様に見えますが、次々に茎は新しくできていて主茎のように見え
、これを仮軸分枝と言います。
ミニトマトは果実が小さいから良いだろうと言ってわき芽を取らないと、中央の図の放任のよ
うにそれぞれのわき芽を取るのが複雑になり、実も小さくなってしまいます。ある程度の大き
さの果実を順々に収穫しようと思えば、大玉トマトのように必ずわき芽を取り、1本仕立てに
する方がお勧めです。
トマトの芽欠きのポイント
トマトのわき芽を取る、芽欠きの仕方が分からないと良く聞きます。そのような人の畑を見る
とわき芽が伸び過ぎ、その先に既に花が咲いています。つまり最初からわき芽を取っていない
ため、1本仕立てになっていないのです。必ず定植した後、花房と花房の間に伸びてきている3
本のわき芽が5㎝になった頃、指でつまんで前後に押した後に強く押しながらわき芽を取りま
す。その際に折れ口に指が触れないように注意して、汁液がつかないようにします。もしトマ
トが病気に罹っていた場合に、それを伝染させないためで、ナイフやハサミも使いません。ま
た無理に小さいわき芽を取ろうとすると、茎の先端を取ってしまう危険性もあります。わき芽
が伸びて開花しかけた頃に、わき芽をとっても構いません。ただわき芽を大きくすると折れに
くくなるの注意します。
関連の記事が 園芸植物・園芸情報 にもありますので、ご覧ください。
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