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2022年5月26日 (木)

・4月半ば過ぎの北野天満宮ではご神木の北野桜の花が白から桃色に変わってきています

 

北野天満宮の春の花というと梅の花が有名です。それは菅原道真公の大宰府への配流される折に自宅で詠ま

れた、「東風吹かば匂ひおこせよ梅の花 あるじなしとて春な忘れそ」があるからです。しかし同時に道真

公は桜の花にも心を寄せられ、「楼花ぬしをわすれぬものならば 吹きこむ風にことづてはせよ」とも詠ま

れています。北野天満宮の現在の駐車場付近は、嵯峨天皇の御代に開かれた北野右近の馬場であり、乗馬を

好まれた道真公のお好きな場所でした。またこの辺り一帯は、桜狩が行われたほどの桜の名所でもありまし

た。

今も境内にはヤマザクラや枝垂れザクラが咲き、社務所前では樹齢130年のご神木の北野桜がその花弁の色

を白から桃色に変わってきます。この北野桜はヤマザクラよりも標高の高い山野に分布するカスミサクラ

で、サクラの野生種の一つです。開花は桜の中では遅めで、関西では4月中旬から下旬に見ごろになり、ヤ

マサクラよりも遅く咲くので見分けられます。この花は咲き始めには白色ですが、咲き進むにつれて桃色に

花弁色が変わることが100年以上前に偶然に発見され、珍しい桜として北野天満宮に奉納されたようです。

2016年に北野天満宮の依頼で住友林業が調査したところ、従来のカスミサクラとは異なる遺伝子を持つ新品

種であることが確認され、北野桜と命名されています。

実は北野桜に限らずどの桜でも、先に紹介した御衣黄や鬱金では例外ですが、たいていの品種では散りはじ

めには赤みが濃くなってきます。北野桜ではこの傾向が特に顕著であり、これほど桃色が濃くなる品種は珍

しいようです。

サクラの花が散り際になると、花の生殖器官としても役目は終わりとなり、老化の段階に入ります。老化現

象の一種としてアントシアニン合成が始まりますが、先にケヤキの紅葉の例について紹介しています。アン

トシアニンが合成されるに伴い、北野桜では花弁色は赤味を増してきて桃色に変わるのだと思われます。

 

  • 1dsc_0008a

北野桜

北野桜の白い花も、咲き進むにつれて、このように桃色が濃くなってきます。

若い花は白っぽく、咲き進んだ花は桃色になっています。

  • 1dsc_0009a

北野桜

社務所前のご神木の北野桜の全景です。花弁は長さ12~19mmで広倒卵形~広楕円形の、比較的小さな花で

す。

 

  • 2dsc_0012a

北野桜

この北野桜では花と新芽も同時に出てきますので、花の間に葉がかなり混在しています。葉の色も薄いもの

から濃い緑色のものまであります。花も白い花から、桃色の花まであります。

 

  • 3dsc_0038a

北野桜

青空を背景に撮ると、若い白色の花も咲き進んだ桃色の花も鮮やかです。

 

  • 4dsc_0056a

北野桜

比較的下のこの枝では、白い若い花と、桃色の咲き進んだ色の花とが、それぞれがかたまって咲いているよ

うです。花の白と桃色、葉の緑色とそれに空のブルーの色が鮮やかに見えます。

 

  • 5dsc_0051a

北野桜

枝の先端には若い白色の花、その下には桃色の咲き進んだ花が、それぞれ綺麗に咲いています。適度に桃色

の花と白い花が、緑の葉の間に分布しています。

 

  • 6dsc_0075a

北野桜

花だけを拡大してみました。先端部には白色の若い花が集まり、5枚の花弁をいっぱいに広げています。若

い花より下の部位で早く咲いた花は桃色になり、花弁はやや閉じかけています。その花弁では基部ほど、桃

色が濃くなっています。花弁も基部ほど、濃い桃色になっています。花弁の下のガク筒と小花柄(花を着け

ている茎部)の先端は、桃色になっています。

 

  • 7dsc_0020a

北野桜

北野桜では写真のように、枝ごとに白色の花と桃色の花と緑葉が散在しており、普通の桜とはまた違った非

常にカラフルな趣があります。

 

  • 8dsc_0029a

北野桜

この写真でも緑色の葉に交じり、桃色の花と白色の花が散在しています。葉も出だしたばかりの薄黄緑色の

若葉と、緑色の成葉があるようです。

 

  • 9dsc_0043a

北野桜

少し花を大きくするために、近寄って撮りました。左下には白色の若い花が、その上側ではより咲き進んだ

基部が桃色の花があり、右下側にはより咲き進み桃色部分の多くなった花が見られます。

 

  • 10dsc_0016a

北野桜

これは先程の写真より、やや若い花が多いようです。中央部に白色の若い花が開花し、その周りには咲き進

んで花弁が閉じかけると共に、桃色に変色した花が見られます。

 

  • 11dsc_0052a

北野桜

ここでは中央部に白色の花が3つあり、その周囲ではほぼ咲き終わった花があります。そのどの花も桃色が

濃くなり、ガク筒と小花柄の先端部も濃い桃色になっています。

 

  • 12dsc_0031a

北野桜

ここでは右側には白い花がかたまり、花弁はよく開いています。その左側には咲き進んで濃い桃色になった

花が見られ、そのうち何花は花弁も落ちて、雄しべと赤いガク筒だけになっています。

 

  • 13dsc_0066a

北野桜

ここには幾つかの桃色になった老花が見られ、花弁はかなり閉じてきています。右側の4花では花弁が落花

してしまい、雄しべの周りの桃色のガクが四方に開いています。

 

  • 14dsc_0062a

北野桜

中央部には真白の若い花が開花しており、上側には閉じかけた桃色の花が5個見られます。

 

  • 15dsc_0086a

北野桜

下側には白色の5枚の花弁を開いた若い花があり、中心部には雌しべの周りに40本ほどの雄しべが認められ

ました。

 

  • 16dsc_0086a

北野桜の果実

開花した4月17日の約1か月後の5月20には、赤い実が幾つか着いていました。熟して濃紫色になれば、食べ

られないことはないですが渋いようです。

 

  • 関連の記事が 京の街角 にもありますので、ご覧ください。

 

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