« ・北野天満宮で菅原道真公を偲びながら、公に愛された紅梅、白梅と緑色の梅を楽しんできました | トップページ | ・首途(かどで)八幡宮では源平咲のハナモモの赤花、白花に交じり赤のしぼりが入った花々が満開です »

2022年4月17日 (日)

・平野神社では緑色の桜‘御衣黄桜’と‘鬱金’(うこん)が、千本釈迦堂でも‘御衣黄桜’が綺麗に咲いています

 

平安時代から日本人はサクラの花を愛して、サクラは花の代表となって生活の中に溶け込み、多くの歌にも詠

われてきました。日本人は古くからサクラの花を改良しようとして、多くの品種が育成されてきて、現在では

600種以上の品種が確認されています。特に江戸末期にできたソメイヨシノ(染井吉野)は、明治末期には接

ぎ木されて全国に広がっています。今年は桜の開花も早く、コロナ感染防止の三密を避けながら、何とか桜を

見ては息抜きをしています。サクラの中では私は赤味の濃い八重桜が好きですが、緑色の桜も大好きな花で

す。そのような緑色の桜の品種として、‘御衣黄桜’と‘鬱金’(うこん)があり、京都では平野神社と千本釈迦

堂が有名です。その他、雨宝院と六孫王神社、それに原木のある仁和寺でも拝見できます。

以前に紹介しました’御衣黄桜’を基にして、再構成して緑色の桜の美しさを紹介します。 

 

Photo_20220417010601

平野神社

サクラはバラ科スモモ属の落葉性広葉樹です。花が葉の出るより先に出てくることから、「花葉見ず、葉花

見ず」と言われています。私たちはなにも違和感なく、春にサクラの花を愛でています。しかし、高校時代

の友人がドイツからのお客さんの接待で東京から上洛して、サクラを見せたそうです。その反応は意外なも

ので、葉がなくて花だけが咲いているのは何かグロテスクだという奇妙な反応でした。ドイツにもサクラン

ボがありサクラと同じように花が咲いているはずですが、気候条件が日本とドイツではかなり異なります。

日本では冬の寒さで休眠が破れ、それからゆっくり暖かくなって春に花芽が発育し、花が咲きます。更に温

度が高くなってきてから、葉が芽吹いてきます。しかしドイツでは他のヨーロッパの国々と同様に、冬から

春になってもまだ温度は低く、夏近くなってやっと花と葉が揃って生長をしてきます。そのためドイツでは

花を葉と一緒に見ているため、日本の桜に違和感を感じたのだろうと思います。

 

Photo_20220417011301

‘御衣黄桜’

京都の桜は疎水や高野川との取り合わせも中々落ち着きますが、やはりサクラと言えば平野神社の桜を落と

すわけにはいきません。平野神社は奈良の平城京の宮中に祭られており、御所や都の災いを鎮めるお守りを

していました。794年に桓武天皇の平安遷都に伴いこの地に鎮座してきた神社ですが、神社ごと京都に移っ

てきたのは、数ある神社の中でもここ平野神社だけです。

平野神社には原木の桜など貴重な品種や珍種も多く、その種類は約50種あります。円山公園の枝垂桜の祖の

桜も含め、境内には約400本の桜があり、春の夜桜は特に有名です。10月頃から十月桜が咲き続け、冬に訪

れたときには寒桜が咲いていました。4月中旬には、‘御衣黄桜’と‘鬱金’(ウコン)が見られます。普段の拝観

は無料で、いつ訪れても落ち着くところです。

また千本釈迦堂は千本通りにあり、素敵なサクラとツバキが植わっています。千本通りは平安時代には朱雀

大路であって、北は船岡山に繋がり、南には城南宮に通じるかっての大通りでした。千本釈迦堂は今から約

800年前、鎌倉初期安貞元年(1227)義空上人によって開創された寺です。境内には‘御衣黄桜’と‘普賢象

桜’に加え、巨大な枝垂れ桜の‘阿亀桜’(おかめさくら)があります。

 

平野神社の‘御衣黄桜’と‘鬱金’(ウコン)

Photo_20220417011401

’‘御衣黄桜’

 ’御衣黄桜‘は江戸時代に京都の仁和寺で栽培されたものが初めとされており、名前の由来は平安貴族の衣服

の萌黄色に近いため、’御衣黄桜‘と呼ばれています。‘御衣黄桜’は、江戸時代に長崎に来たシーボールトの持

ち帰った標本が、現存するといいます。京都では平野神社と共に、千本釈迦堂の‘御衣黄桜’が有名です。緑色

の花は八重桜の濃赤色と共に私の好きな色ですが、鴨川の堤や哲学の道横にもあり、今では‘御衣黄桜’も全国

に広がり、各地で見られます。

 

Photo_20220417011402

‘御衣黄桜’

’御衣黄桜’は八重桜の1品種で、花弁数は10~15枚くらいあり、花の直径は2~2.5cm。花弁は肉厚で反り返

り、色は白から淡緑色。中心部に紅色の条線があり、4月中下旬ころの開花時には目立たないが、次第に中

心部から赤みが増してきます。以前見たものに比べ、今年は赤みがほとんどまだ出ていないようです。新し

く出かけた葉よりも花弁は綺麗な緑色をしています。花弁数も多い八重で、咲き進むと花弁も開いてきま

す。葉の横側にたくさんの蕾がついていました。ガク片も花弁も同じ鮮やかな緑色で、雄しべも花弁と同じ

緑色のようです。

 ’御衣黄桜‘は、黄色・緑色の花を咲かせるサクラとしてウコン(’鬱金‘)とともに古くから知られていまし

た。咲いてもあまり目立たないで、桜を愛でる人も桜の木とは気が付かないで、通り過ぎるようです。

 

Photo_20220417011501

’鬱金‘

 ‘鬱金’も‘御衣黄桜’と同じ緑色の桜です。この緑色は葉緑素によるもので、‘鬱金’はその数が少ないため、‘御

衣黄桜’より淡い緑色をしています。‘御衣黄桜’より、かなり多くの花が集まって咲いています。

 

Photo_20220417011502

’鬱金‘

 花を少し大きく撮りました。花数は’御衣黄桜’よりやや多いようで、やや淡い緑色の花です。

 

Photo_20220417011601

’鬱金‘

‘鬱金’では蕾の時には外側の花弁は、ややピンク色を帯びているようです。

 花弁数は‘御衣黄桜’よりやや少ないようです。

 

Photo_20220417011701

’鬱金‘

’御衣黄桜’より多くの蕾が集まって咲くようで、群がって咲いているような感じです。花だけを大きく撮りま

した。花の中の雄しべの色も、緑色のようです。

 

千本釈迦堂の’御衣黄桜’

Photo_20220417011702

’御衣黄桜’

4月中下旬ころの開花時には目立たないが、次第に中心部から赤みが増してきます。

 

Photo_20220417011801

’御衣黄桜’の蕾

Photo_20220417011802

’御衣黄桜’の蕾

’御衣黄桜’はほとんどがまだ蕾で、人目を全く引かずで、みんなのお目当ては‘阿亀桜’に向かっているばかり

で、御衣黄桜に目を向ける人はありませんでした。木全体が緑色っぽく、誰もサクラの木があるとは思って

いないようでした。 

 

Photo_20220417011901

’御衣黄桜’

その8日後になると八重の蕾も大分開き、‘御衣黄桜’らしい雰囲気を出してきました。この花などはかなり緑

色で八重の花弁が、綺麗に開いてきています。 

やっと緑色の八重の花が咲き、‘御衣黄桜’らしくなり、花弁はかなり肉厚で反り返ってその特徴をよく表して

います。

 

Photo_20220417011902

’御衣黄桜’

花をかなりアップしてみましたが、花弁数は12枚くらいでしょうか。それと中央から雌しべが突き出してい

ましたが、それも緑色でした。

薄紅色に咲き乱れるサクラの美しさは言うまでもありません。しかし、御衣黄桜のように、そこはかとなく

放たれる桜色もまた、私たちの心を和ませてくれます。


名残り桜の舞いは、これから佳境を迎えます。

 

 

|

« ・北野天満宮で菅原道真公を偲びながら、公に愛された紅梅、白梅と緑色の梅を楽しんできました | トップページ | ・首途(かどで)八幡宮では源平咲のハナモモの赤花、白花に交じり赤のしぼりが入った花々が満開です »

・園芸植物・園芸情報 Hort. Plants & Information」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« ・北野天満宮で菅原道真公を偲びながら、公に愛された紅梅、白梅と緑色の梅を楽しんできました | トップページ | ・首途(かどで)八幡宮では源平咲のハナモモの赤花、白花に交じり赤のしぼりが入った花々が満開です »