・岩手県が生んだ薄幸の詩人「啄木のふるさと」の絵葉書を学生時代に買っていましたが、それが書棚から出てきました
学生時代には、リュックを担いで日本中を旅行していました。たいていは山岳地帯でしたが、その合間には
観光地に行くこともありました。そんな旅行の一つで、岩手県の小岩井農場を訪れたり、石川啄木の足跡を
追ったこともありました。断捨離で書棚を整理していると、その際に買ったと思われる「啄木のふるさと」
の絵葉書が出てきました。スケッチ入りで懐かしい短歌が示されていますので、ここに紹介します。
絵葉書の説明から彼の略歴を引用します。石川啄木は本名一(はじめ)といい、明治十八年十月二十八日、
岩手県岩手郡玉山村常光寺に住職石川一禎の長男として生れました。一家は間もなく隣村渋民村に転住し、
そこで幼少年時代を送りました。唯一の男子として両親の愛情を一身に受け、村人からは神童と騒がれ、気
位高く育ちました。
渋民小学校を卒業、盛岡高等小学校を経て盛岡中学校に学び、明治三十五年秋卒業を目の前にして退学上
京、三十八年二十才で処女詩集「あこがれ」を出版し、天才詩人の評判を得、その年に堀合節子と結婚しま
した。しかしその後生活苦のため母校渋民小学校の代用教員をしたり、北海道を漂浪して地方新聞記者生活
などを続け、明治四十一年作家を志して上京、四十三年歌集「一握の砂」を出版しました.その間.分散し
ていた家族を東京に集めたが、生活苦、家内の不和、病気、病死など相次ぐ不幸の内、明泊四十五年四月十
三日東京小石川久堅町一隅で二十六才七ヶ月の短かい生涯をとじました。
「啄木のふるさと」絵葉書
どこで買ったのかは忘れてしまいましたが、発行は田口写真館、デザインは関口定雄、企画は福田芳文堂と記されています。
「啄木のふるさと」絵葉書の裏面
切手は25円で良かったようです。絵葉書の料金も100円とありました。国立大学の学費が1か月1000円でし
たね。今の学費は高すぎます。
「一握の砂、悲しき玩具」
これは時折読んでいる、石川啄木の歌を載せている「一握の砂、悲しき玩具」で、絵葉書のほとんどの短歌
もここに載っています。
不来方の……
大好きな歌の一つです。「不来方の お城の草に 寝ころびて 空に吸われし 十五の心」
不来方とは今の盛岡城の事です。
同じ時に歌ったこんなのもあります。
「城跡の 石に腰掛け 禁制の木の実を ひとり 味わいしこと」
石をもて追わるる如く……
故郷の渋民村を離れなければならなかった、悲しみは終生心に残ったようです。いろいろの出来事が重なっ
たようです。
「石をもて追わるる如く ふるさとを 出しかなしみ 消ゆる時なし」
そんな故郷でもやはり懐かしく、東京でもその方言を聞きに停車場に聞きに行ったようです。これも懐かし
い歌です。
「ふるさとの訛りなつかし 停車場の人込みの中に そを聴きに行く」
やはらかに……
岩手県を縦に盛岡市をも通って流れる北上川は、啄木には心に深く刻まれていたのでしょう。細く長い柳の
葉は、更に哀愁を深めたことでしょう。北上川河畔の啄木公園に、この歌碑が立っており、岩手山も望めま
す。これも分かり易くて大好きな歌です。
「やはらかに 柳あをめる北上の 岸邉目に見ゆ 泣けとごとくに」
啄木と共に故郷を離れた母の気持ちを、次のように歌っています。
「このごろは 母も時時ふるさとの ことを言ひ出づ 秋に入れるなり」
汽車の窓……
ふるさとの思い出は、山にもあるようです。
「汽車の窓 はるかに北に ふるさとの 山見え来れば 襟を正すも」
かっては神童とも呼ばれた啄木にとって、故郷の思いでは神聖なものだったのでしょうか。山は岩手山で
しょうか。
感傷的に歌ったものもあります。これも良く口ずさんだ歌です。
「かにかくに渋民村は恋しかり おもひでの山 おもひでの川」
ふるさとの……
ふるさとの思い出は、可愛がってくれた母の思い出に繋がるのでしょうか。
「ふるさとの 麦のかをりを 懐かしむ 女の眉に こころひかれき」
ふるさとを歌った歌にはこんなのもあります。
「ふるさとの かの路傍のすて石よ 今年も草に埋もれしらむ」
目になれし……
やはり啄木にとって山・岩手山は、神聖な存在なのでしょう。
「目になれし 山にはあれど 秋来れば 神や住まんと かしこみて 見る」
こんな風に山を歌ってもいます。
「二日前に山の絵みしが 今朝になりて にわかに恋しふるさとの山」
- 関連の記事が 日本の街角 にもありますので、ご覧ください。
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