・3月末からベランダではツバキ品種の‘菱唐糸’が可愛い花を次から次へと咲かせています
ツバキ類の原産地は中国南部を中心に、東アジアに広がっています。その内のヤブツバキは日本原産であ
り、色々の変異が出ています。ヤブツバキは北は青森県の北部から南は沖縄県の人重山諸島まで、北海道を
除く地域に広く分布しています。一方、ユキツバ キは北陸から日本海沿いに、北は秋田県の田沢湖付近か
ら、南は滋賀県の北部までの山岳地帯に帯状に分布しています。主に日本の太平洋側に分布するヤブツバキ
が、東北地方から北陸地方の日本海側の多雪地帯に適応して、ユキツバキができたもと考えられています。
日本のツバキはたくさんの品種がありますが、基本的にはヤブツバキとユキツバキの二種に由来していま
す。日本人に古くから愛され万葉集でも詠まれており、このように古い歴史を持つツバキの品種は、京都の
貴族や寺院などで古くから保存されてきたようです。そこで京都園芸倶楽部ではこれら京都に保存されてき
たツバキを、毎年3月京都府立植物園のつばき展で紹介してきました。
一昨年の第58回つばき展の様子は、先に紹介しています。またその花寄せで行った法然院の見事なツバキ
の落花状態、城南宮でのつばきコレクションと落花の様子を先に紹介しました。またツバキは花ごと落花す
ると思われていますが、サザンカのように花弁がハラハラと落ちる散椿もあります。そんな散椿として、豊
臣秀吉が北野大茶会で愛でた五色八重の散椿が今なお地蔵寺に咲いており、この寺に天野屋利兵衛の墓もあ
ることを紹介しています。また花寄せで毎年行く、上賀茂神社近くの柊野にある奥村邸の五色八重散椿も紹
介しています。ここには、木下画伯から頂いた、ツバキ品種の‘菱唐糸’の花の様子を紹介します。
菱唐糸の花
‘菱唐糸’は濃いピンク色の八重で、後で説明しますが唐子咲で蓮華咲の花の特徴がある綺麗な花です。
菱唐糸のつぼみ
晩春咲きで、開花時期は3月から4月と図鑑にはありますように、3月下旬になってつぼみが膨らんできました。
菱唐糸の花
幾つかの花はだいぶ開いてきましたが、まだ本来の特徴は出ていないようです。
菱唐糸の花々
かなり群がって付いていた蕾が、一斉に開いてきました。濃いピンクの柔らかい感じの花です。
菱唐糸の開花してきた花
菱唐糸(ヒシカライト)は園芸品種の1つで、関西で古くから栽培されてきた江戸古典種です。樹高は2m
~4mとされていますが、我が家の鉢植えでは草丈は70㎝くらいです。葉は長い楕円形で、向かい合って対
生についています。
菱唐糸の花(拡大)
良く開いてきた花で、本来の特徴が出てきています。園芸品種図鑑によると、花径は8㎝くらいで、八重蓮
華咲の中輪の花とあります。蓮華咲きというのは横から見ると花弁と花弁の間に隙間があり、立体感のある
花形の事です。花弁が樋(とい)状に中折れして3重、4重に重なるため、花弁間に隙間の出る花形になりま
す。もう一つの特徴は唐子咲きになることで、雄しべの全体あるいは葯(やく)が小さな花弁に変形しま
す。唐子というのは、江戸時代の子供の髪型から来ているようです。
菱唐糸の花(拡大)
花弁が中折れ状で向かい合っているため、花全体が菱形状に見え、花弁の陰影が美しく端正な感じがしま
す。中央部にある、先が白くて下が濃いピンク色をしているのが、雄しべが花弁化し旗弁となっており、こ
の状態を唐子咲と呼んでいます。唐子咲きで有名な品種には、‘日光’(じっこう)、‘月光’(がっこう)など
があります。
菱唐糸の花(拡大)
菱形になった花弁も端正で、花の厚みもかなりあります。唐子部の旗弁の間に、黄色い雄しべも何本か見え
ます。
菱唐糸の花(拡大)
真上から見たとところです。花弁の重なり具合がよく観察されます。雄しべが花弁化した旗弁は先が曲が
り、全体として丸くなるようです。
長福寺の菱唐糸(つばき展)
これは長福寺から京都府立植物園のつばき展に出品された、‘菱唐糸’です。花弁の色はやや薄めのピンクで、
たくさんの蕾がついていたためやや小さめの中輪のようです。
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コメント
おはようございます。
綺麗で珍しい椿のご紹介ありがとうございます。
椿とは思えない?花弁ですね?
コロナウィルスが早く終息しますように。
投稿: マコママ | 2020年5月15日 (金) 07時17分
こんにちは マコママさん!
変わったツバキの花でしょう! 最初は雄しべがどうかなったのかと思っていましたが、
よく見ると花弁に変化しているんですね。(*^o^)
一重から八重化する花は、雄しべが花弁に変化するのですが、それにしても短い花弁になり
丸くまとまるなんて、変わっています。(*^-^)
早くコロナ騒ぎが収まってほしいですね (o^-^o)
投稿: プロフユキ | 2020年5月15日 (金) 15時14分