・豊田市美術館で開催中の「クリムト展 ウイーンと日本1900」を拝見してきました
先に新名神経由で、名古屋にあるヤマザキマザック美術館で開催中の「ロイヤルコペンハーゲンのアール・
ヌーヴォー」を鑑賞したことを紹介しました。今回はその続きで、豊田市美術館で開催中の「クリムト展 ウ
イーンと日本1900」を鑑賞してきました。
今年はクリムトが亡くなって101年にあたり、あちこちでクリムト展が開催されているようです。以前、ク
リムトが亡くなって85年目の2003年にも、兵庫県立美術館でクリムト1900年ウイーン美神展があり、作
品を見る機会がありました。初めて彼の作品をまじかに見たのは1993年に、ウイーンのベルヴェデーレ宮
のオーストリア絵画館で、金の輝きに包まれた多くの女性の肖像画でした。彼の作品は多くの人に認められ
ていますが、時として彼の作品は公的には猥褻とみなされることもあり、公的な依頼での作品を描くことは
ありませんでした。クリムトはハプスブルグ家終焉の正に最後の炎がきらめく、19世紀末ウイーンが生んだ
時代の申し子です。クリムトはキャンバスには描き切れない「生きる喜び」を、金の輝きに託して多くの作
品を描きました。
クリムト展ペーパーバッグと作品紹介冊子
左は2003年クリムト展のペーパーバッグ、中は2019年のクリムト展の作品紹介冊子、右は2003年クリム
ト展の作品紹介冊子です。
クリムト展2003.6-9兵庫県立美術館
これは2003年兵庫県立美術館でのクリムト展で、冊子入れに貰ったぺーパーバッグです。絵は最愛の恋
人であったエミーリェ・フレーゲの肖像(1902)です。
クリムト展2003.6-9兵庫県立美術館
これは上のペーパーバッグの反対側の絵で、絵の題はユディト1(1901)です。旧約聖書外伝に登場する
ユディトは敵の将軍を誘惑して、首を切り落とします。クリムトの手にかかると妖艶な世紀末の女に変貌し
ます。
アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像(1907)●クリムト展2003
同じく2003年のクリムト展で買った、作品紹介冊子です。絵はアデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像画
で、この画で写実と抽象が一つの統合に達しています。クリムトは、すでに風景画にも用いたビザンチン風
の端麗な装飾で、表面を覆いつくしています。よく見直すと、エジプト風の三角の目やミュケナイの渦巻き
文様など、クリムトが好んだ異国風のシンボルが見えてきます。これらの模様は少し時代がさかのぼる日本
の若冲の絵にも既に表れており、豪華に金箔を使っている点も共通です。
クリムトのライフサイクル
クリムトは日本の幕末、1862年ウイーン郊外に生まれ、父親は金細工師でした。20代の若さでウイーン
画壇のスターとなり、やがて金色にきらめく女性像を描いて新しい時代の美の代弁者となりました。「美」
を追求し。肉体に陶酔することにこそ、永遠があると信じて生きる喜びを描きました。
ユディト1(1901)
これは今年のクリムト展で買った、作品紹介冊子です。絵は既に上で紹介しました、ユディト1(1901)
です。死と性、エロス(生)とタナトス(死)の連想は、クリムトやフロイトに限らず当時のヨーロッパ全
体を魅了しました。リヒャルト・シュトラウスのオペラに登場する血に飢えたクリュタイムネストラのドラ
マを、人々は戦慄を覚えながら見ていたのです。敵の司令官の首を左手に持ち、右目はウインクするかのよ
うに閉じかけており、唇もわずかに開き恍惚とした表情を浮かべています。
ベートーヴェン・フリーズ(1901-02)
1900年頃ヨーロッパで熱狂的に崇拝されたベートーヴェンの“英雄”に敬意を評して多くの絵が描かれ、
クリムトもこの作品を描きました。中央に描かれたゴリラのような怪物は、神々でさえ勝つことができな
かったギリシャ神話の巨人テューポーエウス。その右側に立つ3人の娘は病や狂気、淫欲を表すとされ、人
間が幸福になろうとする道を邪魔します。大衆紙などは「猥褻で醜い」と酷評しましたが、芸術家たちはク
リムトに熱狂的な賛辞を送った作品です。
エミーリェ・フレーゲの肖像(1902)
エミーリェ・フレーゲはクリムトの最愛の恋人であり、その死にいたるまで生涯の伴侶でしたが、結婚制
度を取ることはありませんでした。彼女はモードサロンを経営しており、クリムトはそのために布地や型見
本をデザインしました。クリムトのデザインは、自分の風景画の背景から切り取った一片のような印象で
す。
接吻(1907-08)
クリムトは1907年頃、新しい展開に至ります。この絵はクリムトが金を使って、描いた絵の中で最も有
名な作品です。他の作品では君臨しているファム・ファタルがここでは従属しています。ファム・ファター
ルとは、男にとっての「運命の女」の意味で、また、男を破滅させる魔性の女のことです。ここでは彼女は
男に身をささげ、身をゆだねています。紛れもないセクシュアリテイはきらきらと輝く衣装を通して露わと
なっていますが、それは表面的には衣装の陰に隠されています。こうして、タブーの題材である「接吻」は
検閲を免れ、ピューリタン的ウイーン市民の偽善をなじったクリムトは、大衆の熱狂的賞賛を享受します。
絵のモデルは、恋人のエミーリエを抱擁するクリムト自身であるようです。
丘の見える庭の風景(1916)
クリムトは下絵などなしに、いきなり戸外で風景を描くことを好みました。休息のために、裸婦を描いた
残りの絵の具で花を好んで描いたようで、クリムトは自分自身の楽しみのためにこのような風景画を描いた
ようです。
婦人の肖像(1917-18)
1907年頃からピカソが抽象画を描き始め、ムンクやマテイスの作品を見て、クリムトは既に金ぴかが時
代遅れと感じるようになります。まだ背景にはクリムトそのものの模様が見られますが、金彩を使わない絵
を描くようになります。この絵もそんな時代の肖像画です(1917/18)。
- 少し大きな写真と特性などは、右サイドの 日本の街角 に載せますのでそちらもご覧下さい。
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コメント
おはようございます。
東京でも開催されていましたが、行けずでした。
私もウィーンで大好きな「接吻」をまじかに観られた時は暫し、
立ちすくんでしまいましたよ。
オルセー美術館にも1点観る事が出来たましたね。
当時はエゴンシーレもありましたが、
こちらはどうも・・・?でした。
投稿: マコママ | 2019年10月 7日 (月) 07時35分
おはようございます。
すっかりご無沙汰で申し訳ございません。
読み逃げばかりでした!
先生もウイーンのベルヴェデーレ宮殿で
ご覧になられていらっしゃるのですね。
私たちは1999年に行ったロマンチック街道のツアーの際、
寄りました。特に「接吻」が好きでしたのでその前に
立った時は鳥肌がたちましたよ。
当時はエゴンシーレも展示されていましたが、
こちらはどうも??でした。
今はウィーンに彼の美術館が出来ているようですね。
投稿: マコママ | 2019年10月 8日 (火) 11時18分
こんにちは マコママさん!
こちらこそ読み逃げばかりで、なかなかコメントできずにいました。今年の風邪はのどに来て、咳が止まらず長びきました。今はもう大丈夫ですが。(ノ_-。)
そんなわけで前回のロイヤルコペンハーゲン紹介から時間が空いてしまいました。(*^o^)
クリムトの絵は独特の雰囲気で、その時代のの脚光を浴びたでしょうね。とてもその美しさに惹かれますね。ベルヴェデーレ宮ではゆっくり見られ、感動しました。(o^-^o)
接吻は彼の代表作ですね。男性と女性もそれぞれの模様がシンボリックに表現しているようですね。今ちょうど若冲の伝記を読んでいたのですが、彼の金彩の使い方、着物の小紋のような小さな模様など、クリムトは若冲の作品を見たのではないかなどと思ったりしています。(⌒-⌒)
ロマンチック街道のツアーも行かれたのですね、行こう行こうと思いながら、そのツァーには参加できていません。来年は結婚50年なので、イギリスとイタリアに行きたいなあと思っているのですが、足腰を鍛える必要がありそうです。(*^-^)
投稿: プロフユキ | 2019年10月 8日 (火) 23時07分
プロフユキ先生
こんばんは。
コメント2通も行ってしまい
すみませんでした。
コメントの表示が遅れておりますよね?
お手数ですが、削除して頂いても
構いません。
来年、金婚式でいらっしゃるのですね。
それでは絶対、イギリスとイタリアへお出かけくださいませ。
詳しくていらっしゃるのでご安心ですから、
おみ足など鍛えてくださいませ。
投稿: マコママ | 2019年10月 9日 (水) 19時15分
今晩は マコママさん!
いえいえ、私がコメントに気のつくのが遅くて申し訳ありません。(^-^*)
仕事がたまっていたところに風邪にかかり、何とかそれも終わり体調も戻りかけていたところで、ブログも見るだけで何もできませんでした。(*^-゚)
年を取ると無理ができないので、そうなればできることだけをして無理をしないことに徹しています。(*^o^)
マコママさんはお元気でいつも感心しています。今までの旅行も全部まとめておられるし、素晴らしいです。私達も来年はヨーロッパへ行くぞと、足腰を鍛えることにいたします。(o^-^o)
投稿: プロフユキ | 2019年10月 9日 (水) 23時01分
プロフユキさん こんにちは。
クリムトの「丘の見える庭の風景」、緑の中で花々が咲き乱れ
穏やかで優しい陽の光に包まれていて、とても素敵な絵ですね。
クリムトも自然や花を愛した人だったのですね。
大型台風が関東や東北に大きな被害をもたらし、一瞬のうちに
穏やかな普通の生活を奪われた方たちのことを想うと胸が痛いです。
なんだか、自分の庭でバラを眺めて暮らすことが申し訳なく思えます^^;
それでも、生きていかねばなりませんね。
投稿: 亜麻 | 2019年10月18日 (金) 17時02分
こんにちは 亜麻さん!
コメントありがとうございます。クリムトは肖像画を描くことで生活を安定化
させていましたが、時には風景画を急なタッチで描いていたようです。(*^o^)
どうも風景画を開く時が一番リラックスできた安らぎの時間だったようです。(^_^)
最近の雨は熱帯のスコールそのもので、降る量が今までとは全く違いますから、
農地の排水管理、一般の河川管理など根本的に変えなければならない時期に
来ているようですが、対応が遅いですね。今回は台風の影響が御地でも京都でも
あまりなく良かったですね。やはり住むところは大事ですね。(o^-^o)
投稿: プロフユキ | 2019年10月19日 (土) 21時10分