・丹波篠山の玉水ユリ園で60品種・10万株のユリを鑑賞してきました(2:花弁の八重化)
先に丹波篠山で見た、玉水ユリ園で60品種・10万株のユリを紹介 しました。その際花弁数が増えて八重化する一方、雄しべの数が減少している品種がありました。詳しく見ると、6本あるおしべの数が減少しながら、その分花弁数が増加しているように思われましたので、その様子を紹介します。
八重咲きの花における内側の花弁は、雄しべや雌しべが花弁化して八重咲きになっています。花弁はもともと雄しべや雌しべを囲む葉に由来しており、雄しべや雌しべもやはり葉が起源なのです。いずれも葉に由来するものなので、それらがすべて花弁化す可能性はありますが、何故花弁化するのかは不明です。
実際に個々の八重咲きの花を見ると、様々な点で異なっているようです。普通の八重咲きは、雄しべや雌しべが花弁化したものなので、当然ながら雄しべや雌しべはないはずですが、実際には雌しべは正常に残っている場合もあります。また、がく片も花弁化する種類もありますが、がく片は普通の葉が花になりかけた最初の器官になりますので、やはり八重化するのでしょう。
雄しべ花弁化する例としたシャクヤクがあり、またガク片に相当する総苞が花弁化する八重ドクダミの例も 先に紹介していますので、併せてお示しします。
八重のユリ、ドクダミとシャクヤク
上段左は6本の雄しべが花弁化しており、その右は2本のしべが花弁化したユリの花です。下段左は花序の下にある総苞が花弁化した八重のドクダミ、その右は雄しべが花弁化した八重のシャクヤクです。
ユリ(雄しべは1本)
ユリの花には6枚の花弁があり、正確には外側の3枚はがくが色づいた外花被であり、内側の3枚が本来の花弁で内花被です。
ユリ(雄しべは0本)
この花ではおしべはなくなり全てが花弁化したのか、花弁は12枚あるようです。
ユリ(雄しべは1本)
この花ではちょっと斜めになり、雄しべは1本見えます。花弁は少なくとも4枚増えて10枚見えます。
ユリ1(雄しべは1本?)
この花ではちょっと接写していますが、右に1本の雄しべが見えます。花弁も11枚見えますが、花弁の端に雄しべの名残が見えるものあるようです。
ユリ(雄しべは2本)
この花では雄しべが2本残っており、花弁が10枚見えます。
ユリ(雄しべは2本と1本)
左の花では雄しべが2本残り、花弁は10枚見えます。右の花では痕跡状の雄しべが1本、花弁が11枚見えるようです。大体花弁数と雄しべ数を足すと、12になるようです。
ユリ(雄しべは4本)
この花ではおしべは4本で、花弁は8枚で、足せば12になります。
八重ドクダミ
ドクダミは茎頂に多くの花を付け花序になります。4枚の花弁状に見える白色の総苞で、その上に棒状の花序をつけ、そこに淡黄色の小花を密生させています。小花には花弁も萼(がく)もなく、雌しべと雄しべだけがあります。総苞は花序の下にある切れ込みのない葉です。普通に見られるのは一重ですが、八重のものは園芸植物となっています。八重と言っても、総苞片が4枚でなくて八重になっています。この花(花序)では約20枚の総苞片が付き、上の総苞片は密生した小花の間からも出ているようです。
八重シャクヤク
シャクヤクの雄しべは多数あり3~5本に分かれた雌しべを取り囲んでいます。雄しべの変化で、八重化した多くの品種があります。八重化した花でも、中央にかなりの雄しべが残った品種もあります。またかなり花弁数の多い八重の花では、雄しべはほとんど花弁化しているようで、雌しべは見えません。この品種は色もツートンカラーで美しく、外側の花弁は濃いピンク色で、雄しべの花弁化した花弁は白色です。雄しべの花弁化した一部の花弁は、外側の花弁と同様に濃いピンク色で新たな花のように立ち上がっています。
花器形成のABCモデル
一般的に八重咲きとはABCモデルに基づき、雄しべや雌しべなどの花器官が変化して花弁となる 現象(弁化)によって,本来の花弁数が増加した花と考えられています。この説明では、八重咲きはCクラス遺伝子の機能が失われたため,雄しべは 形成されず花弁になります。しかし、例外のない法則はありません。八重咲きの園芸品種をひろく調べると、雄しべが正常に形成される八重品種もあります。バラのようなもともと花器官数不定の種類だけでなく、トルコギキョウのように本来花器官数が定数でありながら、雄しべが弁化せずに花弁数が増えるものもあります。植物には不思議が一杯です。
●少し大きな写真と特性などは、右サイドの 観賞植物の紹介 に載せますの
でそちらもご覧下さい。
●関連の記事が 日本の街角 にもありますので、ご覧ください。
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コメント
こんばんは。
台風は大変でございましたね?
何より停電にはお困りだった思いますが、
大阪ではまだ復旧していないようです。
早い復旧をお祈り致します。
ユリの八重は一度もお目にかかった事はございませんね?
芍薬は見たような?ドクダミも存じません。
遺伝子によるものなのですね?
投稿: マコママ | 2018年9月 5日 (水) 22時10分
今晩は マコママさん!
京都では限られたところだけが停電になったのですが、今は電気がないと何もできませんんね。
丁度家の横に交通シグナルがありますが、それも消えたので、一晩中お巡りさんが手動で
交通整理をしておられ、有り難く感謝しました。(*^o^)
ドクダミの八重はあまり関西では見ないので、友人から分けてもらいました。
椿の八重はよく見かけますが、あれも雄しべが花弁に変わるようです。(*^-゚)
一重も八重もそれぞれに可愛いですけれどね。(^_^)
投稿: プロフユキ | 2018年9月 5日 (水) 22時30分