・これからますます需要の伸びるウォータークレス(クレソン)の栽培と利用
野菜・ハーブの栽培と利用シリーズも前々回のチャービルを2月に、前回のレモンバームを4月に紹介してから、7か月もたってしまいました。今回は肉料理の増加とともに、ますます重要性の増してきているクレソンの紹介をします。
アブラナ科の多年草で、別名はオランダガラシ、オランダミズガラシで、普通にはフランス語から来たクレスあるいはクレソンと呼ばれています。アジアおよびヨーロッパの温帯原産で、北アメリカの湿った場所に野生化しています。ヨーロッパでは古くから、肉料理の付け合わせなどに利用されてきました。栽培種は野生種から選抜された改良種で、日本には明治のはじめ頃導入されました。その後各地で野生化し、やや高地で清浄な水のある川や池などに自生しています。
生育中のクレソン1
生育中のクレソン2
薄緑色の葉は多数の小葉からなって互生し、特有の香りと辛味があります。茎は60cmくらいにも伸び、水にさせば簡単に発根します。花は4,5月頃、白い花が密生して咲きます。種子は小粒で淡い赤褐色をしており、好光性であるため照明下で発芽は促進されます。発芽温度は23~30℃くらいでよく発芽しますが、一般には栄養繁殖で増殖されています。
クレソンの茎葉
特徴的な香りとピリッとした辛味があり、香味野菜として広く用いることができます。ステーキなど肉料理の油っぽさを辛味が打ち消してくれるため、肉料理に組合されたり、またあくが少ないのでサラダとして生食もされます。ウォータークレスはまた、イタリアンパセリでも代用できます。柔らかい葉なので、茹でておひたしや和え物にも使われます。
クレソンとキャベツの栄養比較1
ウォータークレスはビタミンとミネラルを豊富に含んでおり、また辛味成分としてイソチオシアネートを含んでいます。茎葉の乾物重100g当たりタンパク2.1g、脂質0.1g、炭水化物2.5g、カルシウム110mg、リン57mg、鉄1.1mg、ナトリウム23mg、カリウム330mg、繊維分2.5g,またβ―カロテン2700μg、B10.1mg、B20.2mg,ビタミンC26mg含んでいます(五訂日本食品標準成分表)。
表1のように、ウォータークレスはキャベツに比べてもビタミンとミネラルの栄養価は高く、特にβ―カロテン(ビタミンA)が多量に含まれていますので、ぜひとも食べ残さないでしっかりと食べてほしい野菜です。
クレソン料理1(ウォータークレスとキノコの胡麻和え)
湿った畑地でも栽培できますが、水温15~20℃くらいの石灰分に富んだアルカリ性で清澄な流水が得られるところが適地となります。できれば夏季には冷涼で、冬季には温暖であれば周年にわたり栽培できます。水温が20℃を超えると生育が抑えられ、8℃以下では生育は極めて緩慢になります。畑地で栽培するのであれば、腐食成分が少なくて排水の良い砂質土壌が適しています。施肥は元肥主体にし、10a当たり窒素12kg、リン酸8kg、カリ10kgを施用します。高温期には寒冷紗などで遮光をし、低温期にはビニールなどで被覆して栽培すれば、生育は促進されます。3月中旬か9月頃に、15~18cmの苗を15~25cmの株間で定植し、活着後に潅水をして水深15cmくらいに保ちます。
クレソン料理2(ウォータークレスとタマネギソース添えの鮭ムニエル)
茎の先端を15~20cmくらいで刈り取って収穫し、10本くらい束ねて出荷します。生育時期によりますが、生育盛期には20~30日間隔で収穫できます。開花してくると品質が低下してくるので収穫を控えます。
●少し大きな写真と特性などは、右サイドの 野菜とその花の紹介 に載せますのでそちらもご覧下さい。
●関連の記事が 園芸植物・園芸情報 にもありますので、ご覧ください。
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