・パッションフラワーの装飾的な花器の華麗さはどうしたことでしょう!
パッションフラワーの見事な花の構造を4種類について先に紹介しました。熱帯ではよく見られる植物で、観賞用だけでなく立派な果実がなり、さっぱりとしたそのジュースを女性は好んでよく飲んでいます。トケイソウ科トケイソウ属のつる性植物で、約29種類あります。和名はトケイソウで、別名受難の花(パッションフラワー)とも呼ばれます。
花は直径10㎝くらいでかなり大型のもあり、カラフルな模様があり植物園などでもよく栽培されています。ベランダで今年も咲いてきましたので、今年は詳しく花を観察してみました。花弁、おしべやめしべが特異な形をしており、また花弁以外に副花冠と呼ばれる器官が良く発達しています。花弁とがく片はほぼ同じ形と色をしており、更に副花冠と呼ばれる器官が4列に分化して、独特のカラフルな模様をしています。その上にあるおしべも、まためしべもかなり独特の形をしています。
パッションフラワーの花
基部が赤紫色で先端の白い副花冠が放射状に配列されていて、これが時計の文字盤のように見えます。その上にあるめしべの先端が三つに分かれ、時針、分針、秒針のように見えることからトケイソウの名前がついています。
パッションフラワーの花
また副花冠の上にあるめしべを欧米の人はキリストが張り付けられた十字架に、またその上のめしべを張り付けられたキリストに見立て、この花をパッションフラワー・受難の花と呼んでいます。
外側に10枚の花弁があるように見えますが、そのうちやや長いのが花弁で、その間にあるやや短いのがガク片です。短命な花で朝咲いても1日しか咲かず、夕方には閉じてしまいます。
花弁の上にある2列の副花冠
花弁の上側にある器官は副花冠と呼ばれる花弁の付随器官で4列あり、その細長い2列は長短あり下の列は長く、その上の列は短くなっています。どちらも基部は赤紫色で、それから先は白色をしています。
花弁の上にある2列の副花冠
こうしてみるとこの2列の副花冠が同じ軸ではなく、外側と内側にあることがよく分かります。
外側2列とその内側の副花冠の形状
副花冠は全部で4列あり、この図では外側2列の短い方の副花冠と更にその上側(内側)の副花冠を観察しています。外側に比べ内側の副花冠では、根元からほぼ先端まで赤紫色になっています。
内側2列の副花冠
この図に示した内側2列の副花冠はほぼ全体が赤紫色をしています。そのうち内側の副花冠はめしべの基部を包み込んでおり、外側のものは直立しています。じっと見ているとなぜか、この副花冠はまつ毛のように見えてくるから不思議です。
4列の副花冠
こうしてみると4列の副花冠の配列と色・模様の違いが良くわかることでしょう。
外から3列目の直立した副花冠は、その中のめしべを守るようにも、またこぼれ落ちた花粉を拾うかのようにその先端をやや丸くしてびっしりと直立しています。何か目に入るホコリを防いでいる、まつ毛のように見えてしまいます。
おしべの花糸と葯
おしべは途中までのめしべと合体しており、その先端は5本に分かれています。それぞれの花糸の先に葯がついていますが、葯は固定されていなくてクルクル動くようです。開花時には花粉の出る面を上に向けていますが、そのうち下を向いてしまいます。
めしべの柱頭、花柱と子房
めしべの子房の先端は3つに分かれ、それぞれの花柱の先に柱頭があるが、柱頭は下向きについています。パッションフラワーは虫媒花であり、多様な副花冠の形と色・模様、更におしべとめしべのこの形の変化は、花粉を媒介する昆虫の行動と関係があるのでしょう。
●少し大きな写真と特性などは、右サイドの 観賞植物の紹介 に載せますのでそちらもご覧下さい。
●関連の記事が 園芸植物・園芸情報 にもありますので、ご覧ください。
| 固定リンク
「・園芸植物・園芸情報 Hort. Plants & Information」カテゴリの記事
- ・「いずれ菖蒲(アヤメ)か杜若(カキツバタ)」の杜若を、上賀茂の大田神社の池で見てきました(2024.06.04)
- ・つれづれに家人アンナがベランダで咲いている花を使って、先日作ったフラワーアレンジ10種を紹介します(2024.05.24)
- ・あなたは何故あの可愛いいキンギョソウが「噛みつきドラゴン」と呼ばれるのか分かりますか?(2024.05.08)
- ・今年も3月になると赤色・白色の胡蝶蘭が咲き出してきて、4月には満開になりました(後編)(2024.04.09)
- ・今年も3月になると赤色・白色の胡蝶蘭が咲き出してきて、4月には満開になりました(前編)(2024.04.07)
コメント
こんにちは。
パッションフルーツ(トケイソウ)、子どものころ緑のカーテンとして地植えで使っていて、いまでも鉢植えで育てています。大好きな花です。
花の作りが複雑なのに、整っていて、見ていて飽きません。夏の間は外に出しているのですが、今日も一輪咲いています。
投稿: きいろひわ | 2014年8月11日 (月) 09時10分
プロフユキさん、こんにちは♪
トケイソウのユニークな花は見たことありますが、
花のつくりがこういう風になっているとは
今の今まで知らずにいました。興味深く拝見しました。
ありがとうございます。 うーん、ますますユニーク(^^)
たくさんの副花冠や下向きの葯、柱頭など、
どんな虫を誘っているのでしょうね。
投稿: ポージィ | 2014年8月11日 (月) 12時17分
こんにちは。
我が家のパッションフルーツは何がいけなかったか
今年枯れてしまいました( ´・ω・`)
色は今日ご紹介のものとは違いますが
作りは同じです。
我が家では結実したことはないのですが
実家では何度か成りました。
それぞれの部分がこういう名前だったのだと
改めて知りました。
ありがとうございます♪
投稿: 花mame | 2014年8月11日 (月) 15時38分
こんにちは きいろひわさん
たくさんお花を育てていて、今は一面に花盛りなことでしょう
パッションフラワーも咲いていますか、見事な花ですね。ケニアで初めて見て以来
気になっていつも咲かせて楽しんでいます。
本当に見飽きない花で、不思議で華麗な花をしていますね。
投稿: プロフユキ | 2014年8月11日 (月) 19時17分
こんにちは ポージィさん
不思議にこった構造をしていて不思議です。
4列の副花冠も不思議ですが、めしべの柱頭がひっくり返っていて、雄蕊の葯も裏返るので、
花が上を向いた後下に向いても、花粉が付きやすいようにしているのかなと思ったり。
1日しか咲かない花なので、精いっぱい努力をしているのでしょうね。果物用では、
果実の中にはたくさん種が入っていますから。
投稿: プロフユキ | 2014年8月11日 (月) 19時29分
こんにちは 花mameさん
パッションフラワー枯れてしまいましたか、残念ですね 昨年、十分成長して
いなかった可能性はないですか。宿根性なのでかなり養分を蓄えていないと芽生えが悪いことが
ありますね。
我が家のも鉢植えで根があんまり伸びられないので、花は落ちてしまいますね。鑑賞用のは
なかなか実がつきにくいかもしれませんね。
きれいな模様なので、違うカラフルなものも作ってみたいです。我が家のは残念ながら、
ありふれた模様です。
投稿: プロフユキ | 2014年8月11日 (月) 19時40分
こんばんは。
ご訪問ありがとうございました。
パッションフルーツは果実しか知りませんでした。
たいへんわかりやすい解説を、ありがとうございます。
細部も美しい花なのですね
投稿: snufkin♪ | 2014年8月12日 (火) 22時32分
こんばんは~
トケイソウって、、、、
思い出があって、、、小学校から帰る時に、偶然どなたかのお家に咲いていて、、
なんて変わった花だろう~
時計みたいな花だなあ~と思っていたら、、、
名前がトケイソウだってあとで知って、ちょっとびっくりした経験があります。
その時思ったのは、、、トケイソウだったら、、、いったい何時なんだろう~
今度行ったら何時を挿してるか見てみよう!!
で、、、針は回るのかしら、、、
なんて真剣に思ってた自分が懐かしいです。
副花冠って。。。。
本当に、、、まつ毛に見えますネ。
おしゃれなつけまつげ~
今見ても、やっぱり不思議な花だな!!
投稿: 野花 | 2014年8月13日 (水) 00時40分
こんにちは snufkin♪さん
こちらこそ、訪問有難うございます。きれいな花でしょう
果実からパッションジュースがよく作られ、パーラーなんかで見かけますね。
あのカラフルな模様と変わったおしべとめしべに魅かれて、ついつい写真を
撮っていました。何度見ても見飽きない模様をしているので。
投稿: プロフユキ | 2014年8月13日 (水) 01時13分
こんにちは 野花さん
小学校のころに見かけましたか、さぞ感動したことでしょうね。受難の花よりはやはり
トケイソウに見えますね。
何時だろうとは思わなかったですが、あの針のようなのが不思議で、またその下の文字盤の
ように見える構造が品種によってとってもカラフルで見飽きないですね。
じっとファインダーを覗いていると、中央には目玉があり、その周囲を何重にも赤紫色の
まつ毛が重なっているようで、神様も楽しみながら作ったのでしょうね。
美人薄命にたがわず、1日でしぼむのが残念ですが、それだからこそ華麗に見える
のでしょうね。
野花さんのような雄大な山の写真はもう行けそうにないので、超微細な花の接写でした。
投稿: プロフユキ | 2014年8月13日 (水) 01時25分