・芸術の秋、美術館「えき」で棟方志功-幻の肉筆画展を見てきました
先日、京都駅にでたついでに、駅に接した百貨店の中にある美術館「えき」で開催中の棟方志功の肉筆画展に行ってきました。京都には同郷で長年交流を続けてきた山口邸があり、その邸宅に滞在した折に彼の描いた肉筆の板戸、屏風、掛け軸などに描かれた画が保存されています。その“建築装飾画の世界”と版画など約45作品が、今回展示されました。
ポスター
棟方志功は青森県出身で、の20世紀の美術を代表する世界的板画家。豪雪地帯のため囲炉裏の煤で眼を病み、左目は失明しており右目は極度の近視となりました。少年時代にゴッホの絵画・ひまわりに出会い、「わだば日本のゴッホになる」と芸術家を目指しました。
ミシシッピー河の自板像の柵・板画彩色
はじめに油絵を学び、後に版画(彼は自分では板画とよんだ)に取り組むと共に、肉筆画も描き、共に高い評価を得ています。
棟方板画の題名は「大首の柵」、「門世の柵」のように、初期何年かの作品以外は殆ど「○○の柵」と名付けられています。棟方志功の説明によると、「柵」とは四国の巡礼が寺々に納めるお札のことで、願いをかけてお札を納めて歩く心を表すものです。
玫瑰図(はまなすず)
襖絵で肉筆彩色。玫瑰は難しい字で書いていますが、ハマナスのことで右上と左下に、美しく描かれています。
清趣妙韻図
山々の峰と散在する家屋の風景が、力強く描かれています。
万妙如意図
カラフルな仏像に力強い字が添えられていて、どことなくユーモラスな感じが伝わってきます。
優婆夷の柵
仏教徒のなかで、在家の女性信者を優婆夷といいますが、女性らしい温かみの感じる作品です。
二菩薩図
やさしそうな表情の普賢菩薩です。文殊菩薩とともに釈迦如来の脇侍で、一切菩薩の
上首として常に仏の教科・済度を助けるともいいます。釈迦十大弟子と二菩薩のセット
で作られている、その一部です。
丸紋・書
フスマに「天大地大 清厳妙浄」という文字が書かれ、その上にこの丸紋が描かれています。薔薇の花?に魅入った眼がとてもユーモラスです。
弘仁の柵
棟方志功は江戸時代の浮世絵特に美人図(大首絵)に関心をもっていたようで、多くの大首作品を描いています。これらの作品はその中でも棟方美人図の傑作の一つといえるようです。これらの5枚はセットになっており、「妃神シリーズ」というタイトルがついています。
弁財天妃の柵
大首絵の中でも代表的な画で、棟方にとっては弁才天は自らの姓のルーツと同じという思い入れがあって描いたようです。
梨牟醐華妃神の柵
カラフルな彩がその表情とよくつりあい、豊かな驚き、喜び、愛情あふれた作品です。
画面の四隅には、人生の各年代(ライフ サイクル)をあらわす青春・朱夏・白秋・玄冬から、青、朱、白、玄の文字が、その色と共に書かれています。各世代にいつも、感動、喜びがあるということでしょうか。
門世の柵
セットの表紙にもなっているこの門世の柵は、なでしこ妃の柵(安於母利妃の柵)とも言われています。”門世”は、画面の四隅に置いた東西南北の文字が世界へ開ける門だという棟方の造語です。
胡須母寿花頌
このシリーズは愛妻チヤさんをモデルに描かれた作品だとされていますが、特にこの作品ではチヤさんが好きなコスモスを共に描き、そのコスモスの名前に漢字の胡、須、母、寿をあてています。
ゴッホを目指し創作活動を続けた棟方志功は、亡くなる前の年に死を予感したのか、ゴッホと同じ大きさ・デザインの墓の原図を描いている。墓石の前面には「棟方志功 チヤ」と夫婦の名を刻み、没年には永遠に生き続けるという意味を込めて「∞」(無限大)のマークが彫り込まれているそうです。
最後に彼が板画について残した言葉を記します。
「愛シテモ、アイシキレナイ。
驚イテモ、オドロキキレナイ。
歓ンデモ、ヨロコビキレナイ。
悲シンデモ、カナシミキレナイ。
ソレガ板画デス。」
●少し大きな写真と特性などは、右サイドの その他の写真 に載せますのでそちらもご覧下さい。
●関連の記事が 随 想 にもありますので、ご覧ください。
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コメント
おはようございます(^^♪
棟方志功の作品は本当に力強いですねぇ。
それが肉筆画となりますとなおさらでしょう。
その色使いもあって、温もりを感じます。
良い作品に触れさせていただいて
ありがとうございます
投稿: はなのいろ | 2013年10月28日 (月) 07時37分
ユキ先生、こんにちは^^
早速遊びにうかがいました^^
記事を拝見していて、志功の作品のエネルギーが
びんびん伝わってきます!
志功の色使いは、やはり彼の故郷のネブタ祭りを連想します。
妃神シリーズはどの表情も素晴らしく、
人を温かくすっぽり包み込むようで
子どもの頃からずっと心惹かれていました。
私も先生のように、やはり展覧会でこういう
志功の作品と向きあってみたいです^^
投稿: はるる | 2013年10月28日 (月) 16時05分
今晩は はなのいろさん
青森育ちで囲炉裏端の煤で、眼を悪くされたのですね。
でも東北の人らしい粘りとカラフルな彩で、力強い作品を
残してくれていますね。
どの作品もユーモラスで明るく、迫力を感じさせてくれ、
たくさんの感動を貰ってきました。
投稿: プロフユキ | 2013年10月28日 (月) 18時46分
今晩は はるるさん
はるるさんもねぶたの彩を連想されましたか。私も学生時代に青森で
見たねぶたの、巨大なまたカラフルな山車を思い出していました。
妃神シリーズはどの顔もいい表情ですね。ミロのビーナスとは違う、
何か東洋的なやさしさに満ちた観音様のイメージですね。
京都に来ればいつも滞在していて山口邸の、フスマや板戸に画や字を
書き散らしているのも壮観でしたよ。
好きな人の美術展には、やはり何かしらそれなりの収穫がありますから、
出不精の私も時々出かけます。
投稿: プロフユキ | 2013年10月28日 (月) 18時57分
はじめまして。
私は棟方志功さんのファンです。
棟方志功と熊野筆 という展覧会に広島熊野にいってきました。
西日本初の鷲栖図が最初にあり、書簡もありました。
彼が描く女性は豊満で、仏様のようで魅力がありますね。
倉敷の大原美術館にも少しですが展示されていてよくいくのです。
こんど京都にも足をはこぼうかしら。
投稿: よん | 2013年10月29日 (火) 06時29分
今晩は よんさん
私も棟方志功の作品は大好きで、あの製作態度と作品に
愛着を感じています。
棟方志功もあこちに出かけて作品を残しているのですね。
本当に彼の版画の女性はぽっちゃりして優しくて、
母性本能を持った観音様のようで、誰もそれに惹かれますね。
倉敷の大原美術館には素晴らしい作品がたくさんありますね、
私もよく出かけています。
京都の棟方志功展は終わりましたが、これから良い気候ですので
お出でください。
投稿: プロフユキ | 2013年10月29日 (火) 21時55分
こんばんは(*^_^*)
棟方志功さん、独特な画風と色使いですね。
ねぶたの色なのですね・・・
ゴッホになると言われたとかかれているので
ゴッホのあざやかな色使いも影響があるのかと思いました。
倉敷大原美術館にあります。
さすがみなさんよくご存知ですね。
我が家が近いので、
こちらにこられたらぜひお声かけください(*^_^*)
投稿: もみじ | 2013年10月29日 (火) 22時36分
今日は もみじさん
元来日本人は縄文式土器でもダイナミックな形をしていますが、そんな
力強さは東北とか沖縄などに残っているようですね。
青森のねぶたなどの形色にそのダイナミックスさが残っていて、棟方志功の
原点にもなっているのでしょうか。
大原美術館はいいものがありますね、エルグレコの受胎告知とか、
マチスの絵などが好きでした。倉敷の街の雰囲気もいいですね。
有難う御座います、また行く折りには連絡させてもらいます。
投稿: プロフユキ | 2013年10月30日 (水) 16時48分