・京野菜の成立と技術的発展(その5)
これは2006年8月に農業生産技術管理学会シンポジウムで発表したもので、多少内容を変えて6回に分けて紹介します。京野菜の写真は別に載せる予定でいます。
○ 技術的発展
京野菜の成立には上に述べてきたように、京都という土地柄に加え良い種苗が伝播してきたという利点がまずあげられる。しかしそれだけでなく、京都人特有の伝統を重んじる気風や粘り強い篤農家による創意工夫が、そこにはかなり貢献している。その際にも、京都という立地的・気候的特性が大きくかかわっている。
そこで、京野菜の技術的側面を見ると、まず篤農家などによる付加価値をつける創意工夫があげられる。たとえばエビイモと堀川ゴボウがあげられる。これらは特別の品種ではなく、育て方でその付加価値を高めている。
普通のサトイモでは親芋を植え、それから出る小芋と孫芋を収穫するのが普通である。しかし安永年間(1772—81)から始まったようだが、エビイモでは何度も土寄せをしながら、親株近くの小芋は早めに除き、5,6個の小芋を育てていく。何度も株元に土寄せされた土の重みでこれらの小芋は斜めになるが、芋自体はまっすぐ上に伸びようとするため、海老のように曲がったエビイモができていく。
また、サトイモの原産地は熱帯アジアであり、光合成のためにかなりの光度を要求し、光飽和点は80,000lxとトマトより高い。したがって、親芋の葉を真夏であっても制限することで、子芋の葉にも十分な光を与えてやる必要がある。こうして初めて200~300gと大きく育ったエビイモが収穫できる。
これだけ手間ひまかけて世話して育てたサトイモであるから、京都人は古くからおみこしの屋根をズイキで飾り、多くの野菜で壁面を飾った瑞饋神輿を守ってきている。また、お雑煮には大きなサトイモを入れ、お頭になるようにと祝う習慣が残っている。
天正15年(1587)秀吉によって建てられ、また壊された聚楽第の堀の埋立地にごみが捨てられた。その堆肥化したところに育ったゴボウが美味しいことから、巨大な越年ゴボウである堀川ゴボウとなった。
堀川ゴボウは播いて育てた1年目のゴボウでなく、移植して大きく育てられた2年目のゴボウである。中央部は空洞になるが、表皮や柔らかく特有の香りのあるものが優良品とされる。この空洞にウズラやカシワ、カニの身をいれ、味付けしてゆっくり煮込んだものを輪切りにする。
図1 品種改良と栽培技術
図2 品種改良 ダイコン
図3 品種改良 カブ
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