・教授のライフスタイルの海外比較
我が国のA教授の朝は遅い。9時半頃研究室に現れ、秘書がいないので今日来た郵便物の処理を自分ですると共に、事務的な処理をする。講義がなければ研究上のたまった仕事を片づける。午後は学内あるいは学外の会議に出かける。会議から戻ると、研究室の学生の仕事の進展状況を聞き、アドバイスをすると共に怠けた学生の尻をたたく。この間に、電話あるいは来客の仕事の依頼並びに打ち合わせに対応する。その後夕食を取る暇もなく、自分自身の研究活動に着手し、8時過ぎには疲れて帰ることにする。週末の土曜日にも研究室のゼミがあり(最近では土曜日にゼミはできなくなった)、たまの自由な時間なので自分の仕事に没頭し夜に帰宅。日曜日のみ安息日。
一方、私の知っている限りでは米国のN教授も、英国のF教授も、ドイツのW教授も朝は早い。8時過ぎには大学に現れて、仕事を片づけ始める。F先生もW先生も、ネクタイを締めてス-ツを着用。一方、N先生は殆どノ-ネクタイで、ズボンの折り目は無い。予約していた時間には学生が現れ、研究の進展上のアドバイスをする(時間を決めての学生とのディスカッションは有効で、帰国後そのシステムを導入している)。学生は奨学金を貰っている場合が多く、単位を落とせば其れが取り消されるためかよく勉強している。学科の秘書が郵便物あるいは連絡事項の連絡にくる。管理職に当たっている人以外には、会議はあまりない。4時を過ぎる頃、一部の熱心な先生を除いては帰途につく。
W先生は帰宅すると、自宅の地下室に自分で建て増した専用の工作室で、更に建て増しの仕事に着手。大工道具は一通り揃っている。夕食は家族揃って、団らんのひとときを過ごす。F先生は2400坪の庭園で、自慢の世界中から集めた植物の手入れをし、種子を取る物、株分けをする物など、季節ごとの世話に追われる。仕事人間のN先生は夕暮れまで、研究室で若手の教官との仕事の打ち合わせや論文書きに追われ、いつものごとく雑然としたままの部屋から帰宅する。
ドイツ・ハノーバー大学のウィーべ教授
週末になるとどの先生も、自宅で家や庭園の世話に明け暮れ、また地域の活動の世話をする。N先生は4WDを引き出し、学生や私のような海外からのゲストを誘い、3時間ほどドライブをして、ホエ-ルウォッチングの出来る郊外の別荘へ出かける。しかし、翌日は朝早く起き、教会に出かけて奉仕活動に参加する。どの先生も日曜日には大体教会に出かけ、1週間の活動を反省する時間を持っているようであり、不信心の仏教徒としては戸惑う。
どの先生もバカンスには4週間くらい、家族連れでキャンピングカ-を運転して、気軽に海外へ出かけている。また、よく海外の学会には夫婦で出かけ、情報交換を積極的にしている。
英国ワイカレッジでの卒業式に行く教授たち
そろぞれ出身校の博士のガウンをまとっている
このように、内外で教授の行動パタ-ンにかなりの違いがあり、自ずと其れが学生の指導にも影を投げかけている。十分な時間的、精神的余裕がないため、余裕のない型にはまった、過保護な指導をしてはいないだろうかと、A先生は自問自答している。もう少し、学生の自由なアイデアと才能に期待し、その計画力、実行力、考察力、発展性に期待したらどうなるだろうかと悩んでいる。T大学連合大学院の場合も設立10年となり、周囲を見ても指導教授の指導がよいのか、学生諸君が頑張っているのか、殆ど3年で無事博士の学位を得ている。ただ単に喜んでいいのかどうか、A教授は疲れた頭で考えている。
(愛媛大学連大広報1996を修正)
英国ケンブリッジ大学での卒業式
イスラエル・ヘブライ大学のハレビー教授
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