・以前に書いた愛読書
学生時代にまず大きな影響を受けたのは,恩師T先生の蔵書数とその読書量,執筆量であった。ご自宅でも研究室でも膨大な蔵書に囲まれ,驚くほどの記憶力で,すいすいと執筆を続けておられた。
小さい頃から私は読書が好きで,読書遍歴を重ねてきている。特に小さい頃は目に付く本は片っ端から読んでいた。子供の頃に読んだ本が懐かしくなり,先日も市の図書館で「家なき娘」を探し出して読んでいて,家族に不思議がられたりした。
学生時代に読んだ本の傾向は,特定のジャンルに偏っていた。主に小説,それも外国のヘッセ,シュティフターやケラーを読んでいた。それ以外では伝記物が好きで,ナポレオンやチャーチル,エディソンなどを読んでいた。随筆もよく読んでおり,特に寺田寅彦,岡 潔,串田孫一,松田道雄などの本はほとんど読んだ。歴史関係では,古田武彦,梅原 猛,和歌森太郎などの本,特に従来になかった資料の解釈に基づく,古田武彦の執筆は科学論文のようでその論理にどんどん引き込まれ,興奮して読んだ覚えがある。梅原 猛の本は古田武彦の本とは異なり,哲学風にあるいは直感を基に推理を加えた「法隆寺の謎」あるいは「柿本人麻呂の一生の謎」など,何度も引きつけられて紐解いてしまった。
この頃を今になって考えて見ると,特定の著者の本を自然に選んで読むようになっていたようである。ノンフィクションも好きなジャンルで,柳田邦男の本はほとんど読んだ。また,以前にアフリカで1年暮らしたり,海外出張も多いことから,海外のことを書いた深田祐介,犬養道子あるいは兼高かおるの本も愛読書の一つである。
特定の著者としていつも読んでいるのは,松本清張,新田次郎,司馬遼太郎,吉村 昭,池波正太郎,藤沢周平などの本であり,彼らの本をほとんど持っている。松本清張の本は歴史小説,推理小説,社会小説そのどれをとっても読み応えがあり,短い文体と豊富な内容にぐんぐん引きつけられた。新田次郎の本は最初は山関係の本から入り,その後他の小説も読むようになった。
最近では学生諸君の文章力が無く,松本清張や新田次郎の本を読むように力説しているが,あまり興味をひかないようである。この二人の文体は,文章が簡潔で内容が豊富であり,かつ論理的にかかれているため,理科系の諸君が論文を書く際にも大いに参考になる。司馬遼太郎の本は,主に明治時代の日本人の飛躍あるいは発展の過程を,従来になかった切り口で書いている点が面白く,ことあるごとに開いている。吉村 昭の本は最近まで読んだことは無かった。ちょうど1986年アフリカにいたときに,調査にきていた京大のYさんが置いてくれていった本が最初で,読むものに飢えていた頃でもあり一気に読み,帰国後は吉村 昭の調査に基づく丹念な執筆態度にひかれ,読むようになった。池波正太郎,藤沢周平の本は,人間関係に疲れたときに,人に対して不信感に陥りがちな精神のバランスを矯正するのに,きわめて優れた本であり,日本人の持つ繊細で優美な精神があるように思う。
左の本の詳しい内容を見るには文中の渡部昇一、立花 隆、梅棹忠夫(緑色)をクリックしてください。
私の興味は本の読み方あるいは知的生産にもあり,渡部昇一,梅棹忠夫,加藤秀俊,川喜多二郎,脇 英世,湯川秀樹,糸川英夫,竹内 均,立花 隆などの本は目につけば買って持っている。研究生活を始めた頃で,なにをどうして良いか分からない頃,渡部昇一,梅棹忠夫,竹内 均の本には大いに影響され,これによって私の知的生産の根幹を築くことができ,それは現在に至っている。離れ小島に持っていくとすれば,この三人の本を私は持っていくだろう。
図書館の思い出もつきない。留学中によく訪れたカリフォルニア大学デイビス校やロンドン大学ワイカレッジの図書館,あるいはデンマーク・オーデンセの園芸研究所の図書館など,コンピューターと格闘しながら本を探した思い出など,今は懐かしい。現在の学生諸君は,以前に比べて恵まれた読書環境にあり,自分の世界を本との触れあいで広げていって,将来に備えてほしいと思う。
チコリの花と軟白した葉
キク科に属する多年草で、原産地はヨーロッパ。和名はチコリ、キクニガナで、フランスではアンディーブと呼ぶためエンダイブとよく混同される。花やつぼみはハーブとしても用いられ、伸びた根をフライパンなどで煎ると、珈琲としても使える。少し苦みがあるため、普通には1~2月にかけて生育の停止 した根株を堀上げ、根株を 軟白したものを収穫する。開花期は夏頃で、鮮やかな青色の小花つける。
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