・「いずれ菖蒲(アヤメ)か杜若(カキツバタ)」の杜若を、上賀茂の大田神社の池で見てきました
菖蒲(アヤメ)、杜若(カキツバタ)と花菖蒲(ハナショウブ)、それにジャーマンアイリス、ダッ
チアイリス、キショウブなどもすべてアヤメ科アヤメ属の花で、花の咲く時期も5~6月に咲くため
何の花かは分かりにくいものです。そこで「いずれ菖蒲か杜若」は、どちらも優れていて優劣が決め
難いという意味で言われるようになりました。
5月になって上賀茂神社の摂社の大田神社のカキツバタが見ごろを迎えているとの新聞報道がありま
したので、5月14日に見学に行きました。参道の脇の「大田ノ沢」では、約2000㎡の敷地にカキツ
バタ約25,000株が自生しており、「大田ノ沢のカキツバタ群落」と呼ばれています。この大田ノ沢
は平安時代からの名所で、尾形光琳の『燕子花(カキツバタ)図』のモチーフになったとの言い伝え
もあるようです。毎年5月上旬から中旬にかけての開花時に、沢一面に濃淡さまざまな紫色の花をつ
け、多くの観光客の目を楽しませてくれています。
大田ノ沢は古代には深泥池と同様に沼地であったといわれ、かつて京都盆地が湖であった頃の面影を残
すものであるとして、カキツバタ群落とともに、昭和14年(1939年)に国の天然記念物に指定され
ています。
文治6年(1190年)には、『千載和歌集』の編者で著名な藤原俊成が、紫一色に染まる様子を一途
な恋心に例えて次の歌を詠んでいます。
神山(こうやま)や 大田の沢の かきつばた ふかきたのみは 色にみゆらむ
歌の意味:神山(賀茂別雷命の降臨地)の近くにある大田神社のかきつばたに、深くお願いする色事
は、かきつばたの色のように一途で美しく可憐なのだろうか。— 藤原俊成
さてアヤメ類の花の種類を見分ける基準ですが後に示しますように、①生息地が畑地か水辺か、②花
と葉ではどちらが上にあるか、③ガク片由来の外花被基部にある模様・色の三点で区別できるようで
す。内側の3枚の花弁由来の内花被は花心を包むように立ち上がり、外側3枚の外花被はだらりと垂れ
下がっています。
カキツバタは、①水辺に生えており、②葉が花より上に出ており、③外花被の基部に白い目型があり
ます。③の白の目型があればカキツバタと決めて良いようです。それでは実際に大田ノ沢で見た花
で、それを確認してみましょう。
大田ノ沢のカキツバタ
ちょっと行くのが遅れて、開花盛期をやや過ぎていて、咲き終わった花がらも見られました。日差し
がきつくて、影の部分にピンと合わせていると、写真では日の当たっているところは白くなってしま
いました。手前の花を見ると、花より上に葉があるのが分かります。
また、葉の先端は下に垂れています。